大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和48年(オ)785号 判決 1974年10月24日

主文

理由

上告代理人前堀政幸、同前堀克彦の上告理由第一点について。

原審は、(イ)訴外朝日製菓株式会社は昭和三八年一月二八日に支払を停止し、同年一二月二五日破産宣告を受け同日被上告人がその破産管財人に選任された。(ロ)上告人は、訴外会社に昭和三七年九月八日三〇万円、同月一二日二〇万円計五〇万円を貸し渡した。(ハ)訴外会社は、その加入していた訴外京都市場協同組合から昭和三八年一月三一日脱退して訴外組合に対し五〇万円の脱退金債権を取得し、同日これを訴外会社の上告人に対する前記貸金債務の代物弁済として上告人に譲渡し、上告人は、同日訴外組合から右脱退金債権の弁済を受けた。(ニ)訴外会社、上告人とも右行為をするにつき他の債権者を害する悪意があつた、との諸事実を認定した上、被上告人の本訴による否認権行使により右債権譲渡行為は否認されたものというべきところ、上告人において既に右譲受債権を取り立てているから、上告人は、被上告人に対し、五〇万円及びこれに対する右弁済を受けた日の翌日である昭和三八年二月一日から右完済に至るまで商事法定利率の年六分の割合による法定利息を支払うべき義務がある旨判示している。

しかし本件記録に徴すれば、上告人が訴外組合から前記脱退金債権の弁済を受けたとの原審の認定事実については、原判決の挙示する証拠はいずれもたやすく右認定に添うものとはいい難いのであつて、原判決には証拠によらないで事実を認定したか、少なくとも理由不備の違法があるものというべく、この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨はこの点において理由があり、その余の上告理由について判断するまでもなく原判決は破棄を免れず、原審において更に審理を尽くさせるのを相当とするから、本件を原審に差し戻す

(裁判長裁判官 藤林益三 裁判官 下田武三 裁判官 岸 盛一 裁判官 岸上康夫)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例